アガベは比較的発芽しやすいと言われる一方で、
「種をまいても芽が出ない」
「ようやく出てもすぐ腐ってしまう」
というお悩みをたびたび耳にいたします。
そこで今回は、オテロイ種子に7種類の前処理を施した発芽比較実験の結果をもとに、初心者でも無理なく実践できる発芽率アップのポイントを説明します。
今回は元々発芽率が悪いオテロイの種子を使用しています。
実験で用いた7パターンの前処理

パターン | 前処理内容 | 吸水時間 |
---|---|---|
A | メネデール+ベンレート | 10 時間 |
B | ジベレリン+ベンレート | 10 時間 |
C | 50 ℃温湯 | 10 時間 |
D | 殻を削る+メネデール+ベンレート | 10 時間 |
E | 殻を削る+ジベレリン+ベンレート | 10 時間 |
F | 殻を削る+50 ℃温湯 | 10 時間 |
G | 殻を削る(吸水処理なし) | ― |
パターンA~Cは種子を削らず、パターンD~Gは種子を削ったものになります。それぞれメネデール・ジベレリン・お湯のパターンで実験しました。パターンGは吸水処理なしです。

以下のことが実験結果として分かるかと思います。
- 種子は削ったほうがいいのか
- メネデール・ジベレリン・お湯はどれが良いのか
発芽数の推移・実験結果と感想

吸水処理後はキッチンペーパーに播種、播種後約25 ℃・湿度高めで9日間観察しました。
発芽数の推移
※播種したのは各20粒
パターン | 0日目 | 1日目 | 2日目 | 3日目 | 4日目 | 5日目 | 6日目 | 7日目 | 8日目 | 9日目 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
A | 0 | 0 | 0 | 1 | 3 | 4 | 4 | 6 | 6 | 7 |
B | 0 | 0 | 0 | 1 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 8 |
C | 0 | 0 | 0 | 0 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 |
D | 6 | 7 | 8 | 9 | 9 | 9 | 10 | 10 | 10 | 10 |
E | 7 | 12 | 13 | 13 | 13 | 13 | 13 | 13 | 13 | 13 |
F | 2 | 4 | 6 | 6 | 6 | 7 | 7 | 7 | 7 | 7 |
G | 7 | 8 | 8 | 11 | 11 | 11 | 11 | 11 | 11 | 11 |
種子を削らなかったパターンA~Cは、3日目からゆっくりと発芽してきました。ただし、お湯のみ使用しているパターンCは9日目になっても発芽率は比較的低いままでした。
驚くべきなのは、種子を削ったパターンD~F。吸水処理が終わって播種しようと思ってみてみるとすでに種子から白い芽が出ていました。こちらもお湯のみ使用しているパターンFは発芽率は低めです。

パターンGに関しても吸水処理はしていないのですが、ペーパーに播種してすぐに発芽しました。
このことから以下のことが見えてきました。
- 種子を削ると吸水段階ですぐに発芽する
- アガベにおいてお湯での発芽はあまり意味なさそう
正直この時点で「全部削って播種した方がいいんじゃん」と思いましたが、種子を削ったパターンの発芽後が問題でした。
発芽後の成長を確認したところ、削った種子に関してはほぼ成長することなく消滅してしまいました。
発芽数と成長見込み株数
成長したかどうかは、白い芽が出た後に緑色に変わりしっかり芽が立つかどうかで判断しました。

発芽した数に対して、その割合を健全率として表にまとめています。
パターン | 発芽数 | 最終的に成長しそうな株数 | 健全率 |
---|---|---|---|
A | 7粒 | 7粒 | 100 % |
B | 8粒 | 7粒 | 87.5 % |
C | 4粒 | 3粒 | 75.0 % |
D | 10粒 | 1粒 | 10.0 % |
E | 13粒 | 1粒 | 7.7 % |
F | 7粒 | 0粒 | 0 % |
G | 11粒 | 4粒 | 36.4 % |
殻を削る処理(パターンD〜G)は発芽率こそ高いものの、ほとんどの株が発芽した時の状態のまま変化なく枯れてしまいました。

今回の実験結果でいうと、メネデールとジベレリンに関しては発芽率の違いはほぼありませんでした。

ただし、お湯に関しては最初の発芽までの日数はそこまで変わらなかったものの、最終的な発芽率は低かったです。
また、上記の表には書いていませんが、お湯のみを使用したパターンFにおいては20粒中4粒にカビが発生しました。
こちらに関してはベンレートが効いているのかなと思いますが、アガベの発芽処理においてお湯を使用するのは有効な手ではないのかなと思います。
殻を削ると発芽率は上がるが育たない理由の考察
種皮は胚を「水分過多・乾燥・病原菌」から守るバリアのような役割を持っているとのこと。
削ることで吸水は促進されますが、同時に胚が無防備となり、
- 外傷・乾燥による胚の傷み
- 異常発芽(生長点の損傷)
が起きるのかなと思います。
発芽率を優先しても生育安定性が伴わなければ本末転倒なので、削り処理は“最後の手段”として少量の種子に限定するのが良さそうです。
今回使用した種子のように、そもそも新鮮ではないものに関しての発芽を促すための対策としても微妙ですね。
【まとめ】アガベのベストな発芽の方法
種子の発芽率とその直後の成長は両輪です。発芽率の数字だけで判断せず、発芽後の苗の健康状態も確認が必要です。
基本的には以下のような流れがベストなのかなと思います。
メネデール+ベンレートに10時間給水処理 → 播種 → 発芽しないものに関しては種子を削って再度播種
また、用土に播種して発芽しなかった種子は、キッチンペーパーの上に移動して容器で密閉したりジップロックに入れたりするのも有効だと思います。
アガベ(少なくともオテロイ)に関しては、種子を削るのは最終手段として覚えておくと良いのかなと思います。
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